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日本のゲームガラパゴス 岐阜県

第1回:なぜ岐阜だけが独自進化したのか

岐阜県のゲーム業界を俯瞰してみたところ、こんなふざけたイメージに感じた俺
岐阜県のゲーム業界を俯瞰してみたところ、こんなふざけたイメージに感じた俺

過去のゲーム会社の歴史を調べ、各社の系譜をたどり、いまの岐阜というエリアを俯瞰してみると、断片だったはずの出来事が、ゆっくりと一つの輪郭を描き始める。

名古屋のサンソフト。各務原の日本一ソフトウェア。岐阜市のフライト・プラン系、そしてシルバースター。

まったく違う会社なのに、どこか同じ“匂い”が漂っている。

その理由を考えていたら、ある日ふと腑に落ちた。

岐阜のゲーム業界って、ガラパゴスなんだ。しかも、ラーメン屋みたいに独自進化している。

なぜ岐阜だけが、こんな奇妙で面白い進化を遂げたのか。その独自進化の正体を探るため、ここからは岐阜ゲーム界の歴史を順に読み解いていく。


地政学における岐阜ゲーム業界


岐阜のゲーム業界が全国でも類を見ない“ガラパゴス的独自進化”を遂げた理由は、単に企業が集まったからではない。土地そのものが持つ文化と、そこに流れ込んだ技術者・商売人・職人の系譜が、奇跡的に噛み合った結果である。


■ 各務原=川崎重工を母体とした“技術者の街”

ゲーム会社にネーミングライツをとられた各務原市 傷だらけキャラの総合体育館
ゲーム会社にネーミングライツをとられた各務原市 傷だらけキャラの総合体育館

まず、各務原という土地を見てみると、ここは商業都市ではなく、川崎重工を中心とした“技術者の街”だった。航空宇宙、防衛、制御、組み込み。こうした産業が集積し、プログラマーや技術者が自然と集まる土壌があった。

その中で最初にガラパゴス的な進化を遂げたのが T&Eソフト である。

那加中央劇場の経営者が立ち上げたこの会社は、技術者文化の中で“ゲーム専業企業”として誕生し、『ハイドライド』『ルーンワース』『遥かなるオーガスタ』など独自すぎる路線で成功した。しかしその独自性ゆえに名古屋へ移転し、最終的には孤独死する。それでも、「ゲームを作ることだけを生業にする会社」 の草分けとして、岐阜だけでなく世界のゲーム史に残した影響は計り知れない。


T&Eが去った後も、各務原には技術者の街としての土壌が残った。

そこへ、対岸の江南市から“サンソフトの魂を持つ商売人”がやってくる。サンソフトで営業を務めていた北角浩一氏である。

これは推測だが、技術者が多く、家賃が安く、人材が集めやすいという理由で各務原を選び、プリズム企画──のちの日本一ソフトウェアを創業した。

つまり、尾張エリアの商売人が、各務原の技術者文化と出会ったことで、日本一ソフトという“商業的成功を収めるガラパゴス”が誕生したのである。


■ 岐阜市=職人文化と“のれん分け”の街

岐阜市のゲーム企業の本流の一つ、フライトプラン誕生の地である城東通。鎌倉時代の岐阜の中心地でもある。
岐阜市のゲーム企業の本流の一つ、フライトプラン誕生の地である城東通。鎌倉時代の岐阜の中心地でもある。

一方、岐阜市は各務原とはまったく違う文化を持っていた。

小規模工房が多く、職人文化が強く、大企業文化が入りにくい。静かで集中できる土地柄が、フライトプランのような“職人系RPG工房”を自然に受け止めた。

フライトプランはバンプレストの主要協力会社として『サモンナイト』シリーズを手がけ、2014年に孤独死する。

その開発文化は FELISTELLA へ、さらに アポロソフト へと“のれん分け”され、現在に至る。

岐阜市ラインは、他社IPや開発委託を中心とした、バンプレスト的文化の職人系RPGライン として独自の進化を遂げた。


《FELISTELLAの現在──フライトプラン直系の灯が消えた日》

FELISTELLAが入居していたビルからすでに名前は無くなっていた。Xの更新も8月で止まっている。
FELISTELLAが入居していたビルからすでに名前は無くなっていた。Xの更新も8月で止まっている。

フライトプランの文化を最も正統に継承したのが FELISTELLA だった。しかし、そのFELISTELLAは 2025年12月15日、岐阜地裁により破産手続き開始決定 を受けている。

  • 所在地:岐阜市水主町1丁目***

  • 事件番号:(フ)第452号

  • 破産管財人:和田恵 弁護士

  • 報告集会:2026年3月13日 午前11時

同社は『バトルスピリッツ コネクテッドバトラーズ』『MAGLAM LORD(マグラムロード)』などの家庭用タイトルを手がけ、さらにモバイル向けの『限界凸城 キャッスルパンツァーズ』など、複数プラットフォームで開発・運営を行ってきた。

フライトプランの“職人系RPG文化”を受け継ぐ存在として、岐阜市ラインの中心に位置していた企業だ。

その灯が消えたことは、岐阜ゲーム史におけるひとつの時代の終わり を意味している。

今後の同社の行方にも注目していきたいと思う。


■ シルバースター=精密・計測文化から生まれた“第三極”

岐阜市加納にあるシルバースターが入るビル。マックやメガドンキも近いからお昼時も安心だ。
岐阜市加納にあるシルバースターが入るビル。マックやメガドンキも近いからお昼時も安心だ。

そして、岐阜ゲーム界で最も異彩を放つのが シルバースター である。

フライトプラン系のバンプレ文化圏でもなく、各務原ラインとも違う。完全に独立した“第三極”だ。

1997年設立当初のシルバースターは、無線隔測基盤検査装置、積算熱量検査装置、ガス管理システム、冷蔵庫制御システムなど、精密・計測・制御系の技術文化を背景に持つ会社だった。

当初は1,980円の激安ゲーム「ファミリー囲碁」の外部委託開発を行っていただけだったが、その技術を囲碁・将棋AIに転用して世界大会で優勝・入賞を連発し、静かに猛り狂ったこの会社は『銀星囲碁』『銀星将棋』へと進化していく。

岐阜ゲーム界の中で、シルバースターだけは “孤高の精進系工房” として独立した進化を遂げた。


■三つの味で読み解く「岐阜ゲームガラパゴス」


岐阜のゲーム会社を見ていると、どうしてもラーメン屋に見えてくる瞬間がある。看板も味も違うのに、どこか同じ文化圏に属しているような、あの独特の空気だ。

三つの極(ライン)をラーメンに例えると、その違いが一気に鮮明になる。


① 各務原ライン=天下一品(こってり系の総本山)

■SUNSOFT=“元祖こってり”

江南市で誕生した、元祖こってり系ゲームメーカー本業の余技として「こってり」を生み出し、世に送り出した。臭みも独特でファンも多い。

■ 日本一ソフトウェア=“こってりを商売にしたチェーン展開”

T&Eの濃厚さをベースにしつつ、「濃いけど売れる味」へ調整し、世界レベルのチェーン展開に成功した。

■ T&Eソフト=“独自ベースのこってり”(番外)

独自の技術と味を追求しすぎて、気づけば他のどの店とも似ていない“唯一無二の濃度”に到達した存在。

多くのゲーム分野でトップクラスのこってりを見せつけた世界的レジェンドメーカー


② 岐阜市ライン=横浜家系(職人の“のれん分け文化”)

家系ラーメンのように、本店の味を受け継ぎ、のれん分けで広がり、それぞれが微妙に味を変えていく文化。

  • フライトプラン=家系総本山

  • FELISTELLA=直系のれん分け

  • アポロソフト=分派店


③ シルバースター=ミシュラン個人店(精進系の極北)

精密・計測・制御系の技術文化を背景に、囲碁・将棋AIという極限の出汁を極め、世界大会優勝というミシュラン級の評価を得た孤高の店。

三つの味が同じ県内に並んだ結果、岐阜は“ゲームガラパゴス”になった


  • 各務原流:天下一品(技術者文化の濃厚こってり)

  • 岐阜家系:横浜家系(職人文化ののれん分け)

  • 銀星魂 :ミシュラン個人店(精密文化の孤高の精進系)


この三つの味が同じ県内に並ぶ地域は、日本中探しても岐阜だけだ。

岐阜のゲーム業界は、技術者文化・職人文化・精密文化という三つの極が交差した結果、他県では再現できない“ガラパゴス”になった。

今回描いたのは、あくまで 全体像の地図 にすぎない。

次回からは、この地図の源流にあたる企業を、一次資料を手がかりにひとつずつ掘り下げていく。

第2回は、中部ゲーム界の原点にして、岐阜ゲーム文化の“秘伝スープ”を作った存在──

SUNSOFT(サンソフト)。一次資料をもとに、その実像に迫る。

岐阜ゲームガラパゴスの物語は、ここから本格的に動き出す。


なお、T&Eソフトについては当ブログで既に詳しく扱っているため、ここでは重複を避け、該当記事へのリンクを置いておく。 俺カルブログ vol.1 前編        T&E SOFT─個人と企業の文化的地層 俺カルブログ vol.1 後編        T&E SOFT─個人と企業の文化的地層


 
 
 

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